ホーム武蔵野市議会総務委員会行政視察 臼杵市・八町大路の火災復興|商いと町並みをどう取り戻すか

行政視察 臼杵市・八町大路の火災復興|商いと町並みをどう取り戻すか

八町大路の火災復興を調査するため、2026年10月16日、武蔵野市議会総務委員会の行政視察で大分県臼杵市を訪れた。調査事項は「商店街火災被害の実情とその復興について」。サーラ・デ・うすきで、市の担当者や被災した商店街の関係者から、火災の被害と、その後の対応について説明を受けた。

サーラ・デ・うすきの芝生の広場を背に立つ武蔵野市議会議員の藪原太郎
武蔵野市議会総務委員会の行政視察で臼杵市を訪問。八町大路火災の被害と、生活・営業の再建、商店街の復興について話を聞いた。

古い町並みが残る商店街で火災が起きたとき、被害の拡大をどう防ぐか。そして、住まいや商いを失った人を支えながら、どのようにまちを再建するか。吉祥寺をはじめ、商店が集まる地域を持つ武蔵野市にとっても、考えておく必要がある課題だ。

八町大路火災の被害 店と住まいを同時に失う

火災が発生したのは、2024年11月24日。八町大路として親しまれる中央通り商店街と、その周辺が被害を受けた。当日は「うすき食文化祭2024」が開催され、普段より多くの人が中心市街地を訪れていた。

視察資料によると、消防が火災を覚知したのは午後1時49分。鎮火は翌25日午前1時15分で、11時間26分を要した。焼損した建物は17棟で、全焼13棟、半焼1棟、ぼや3棟。負傷者は2人、出火原因は不明とされている。

八町大路は、店と住まいが一体となった商店街だ。通りに面した場所で商売をし、その奥で暮らす。火災によって、仕事の場所と生活の場所を一度に失った人もいた。

建物が密接していたため、隣へ燃え移りやすく、消火活動にも難しさがあったという。被災者代表からは、家と家の間に十分な隙間がなく、奥までホースを入れにくかったとの話があった。

市の説明では、電線を伝って道路の反対側に火が移ったことも挙げられた。一方、駐車場として空いていた場所では延焼が止まり、電線類を地中化していた通りについても、延焼の状況との関係が説明された。

道路を挟んでいても、上空の電線が火の通り道になり得る。その怖さは、建物の密集だけを見ていては捉えきれない。

翌日から、生活を立て直す支援を始める

発災直後、市はサーラ・デ・うすきを避難所として開放した。一時は約30人が避難し、翌日午後6時まで受け入れを続けた。市民や企業から届いた支援物資も、ここに集められた。

翌25日には、市長、副市長らが参加する火災対応会議を開き、庁内の対策プロジェクトチームを発足させた。産業担当政策監をリーダーに、産業観光課が事務局を担い、関係部署が対応を進めた。

同じ日に設けた被災者臨時相談窓口には、産業観光課、福祉課、税務課、市民課の職員が入った。商売、住居、税、福祉と、必要な支援が複数の部署にまたがるためだ。

説明では、本人確認に使う書類まで焼けてしまい、手続きをどう進めればよいか分からない状況が紹介された。制度があっても、被災した直後に自分で調べ、窓口を回ることは難しい。

市は26日に支援制度をまとめた冊子を作成し、対象者へ配布した。市営住宅6室や、移住体験用の滞在施設も確保した。保健師は被災者だけでなく周辺地区の人も訪問し、健康状態や精神面の不安について相談を受けたという。

店舗の再建に向かう前に、まず住む場所を確保し、必要な手続きができる状態をつくる。商店街の復興を支える仕事は、こうした生活への対応から始まっていた。

がれきを共同で撤去するための組織

消火が終わっても、焼けた建物やがれきは残る。

11月28日からは、大分県建設業協会臼杵支部の協力で、道路上の障害物を取り除く道路啓開を進め、30日に供用を再開した。市との災害協定を活用した対応だった。

市の清掃センターでは、火災に伴うがれきなどを一般ごみとして無償で受け入れた。搬入された物の分別には職員の手も必要で、処理を引き受ける行政側にも相応の仕事が生じたという。

一方、建物の解体や敷地内のがれき撤去を、被災者がそれぞれ個別に進めることには難しさがあった。土地の境界があっても、焼け落ちた物がその境界どおりに残っているわけではない。

そこで12月16日、被災者による「八町大路火災復旧対策会議」が発足した。共同で解体・撤去を発注するための組織で、市も設立や運営を支援した。

その前の12月10日には、市職員と被災者の代表が北九州市の旦過地区を訪れ、火災からの復旧・復興について聞き取りをしている。被災後の組織づくりや撤去の進め方を、既に経験した地域から学んだ。

撤去費用には義援金も活用した。市の公表では、寄せられた義援金は約3,769万円。被災した住民、事業者、建物所有者に加え、復旧対策会議にも配分され、2025年4月24日に全額の支給を終えている。

説明によると、がれき撤去の完了は同年4月21日だった。発災から約5か月。共同で動く組織、費用、処理先をそろえながら進めた経過が分かる。

元の場所の再建を待たず、商いを再開する

商店にとっては、復興方針が固まり、元の場所に建物ができるまで営業を休み続けることも難しい。

市は既存の空き店舗活用支援補助金に特例を設け、仮店舗などでの営業再開を支援した。説明では、通常の備品購入に加えて必要な消耗品なども対象とし、賃借料を支援する期間も延ばしたという。

何もかも失った状態から再開する際には、設備だけでなく、日々の営業に必要な物も買い直さなければならない。既存制度を被災者の実情に合わせて改めた対応だ。

視察時の説明では、5事業者が制度を活用した。一方、再開が難しいと判断した店もある。制度を用意すれば、すべての店が戻れるという状況ではない。

被災者代表からは、行政と議会が早く動き、民間だけでは難しかった対応を支えてくれたとの話があった。営業を続けるための支援と、まち全体の復興を考える作業を、並行して進める必要があった。

八町大路の復興から、城下町全体を考える

2025年3月には、商店街関係者、建築士、行政関係者などが参加する八町大路火災復興連携会議が始まった。全8回の会議を経て、同年12月に復興方針を市へ提出した。

柱は、地域経済の再生、歴史と文化の保全・継承、新しい人の流れの創出、防災力の向上だ。

さらに2026年2月、具体策を検討するワーキンググループが発足した。参加したのは、10年後もこのまちで事業を営むことを見据えた9人。市が事務局を担い、8月までに23回の会議を重ねた。

ここで検討の範囲が広がった。火災跡地の利用だけを考えるのではなく、商店街、サーラ・デ・うすき、観光交流プラザ、二王座など、周辺の施設や町並みを含めて人の動きを考える。その内容を「臼杵城下町コネクト構想」としてまとめ、8月31日に市へ提出した。

構想では、最初から建物や用途をすべて決めることはしていない。まず立ち寄って過ごせる場所を整え、マルシェやチャレンジ出店などを試しながら、必要な施設や運営方法を確かめる。

資料では、2026年度から2028年度までの3年間を区切りに、段階的な空間整備と社会実験、組織づくりを進める案が示されている。使う場所と、それを動かす人を一緒に育てようとしている。

市は、再建の意向がない地権者と協議し、了承を得られた土地の購入も進めている。ただし、構想に描かれた施設がすべて建設決定したわけではない。現時点では、実際に使いながら具体化していく段階だ。

町並みを守りながら、延焼を防ぐ

防災面では、景観に配慮した小型の街角消火栓を、これまで八町大路地区内に20基設置してきたという。

火災後は、延焼を防ぐ空間としてポケットパークを整備し、耐震性のある防火水槽を設ける計画がある。消火活動では、多くの消火栓を同時に使う中で水圧が下がり、川からも水を引いたとの説明があった。空間を空けることと、消火に必要な水を確保することの両方を考えている。

市の2026年度施政方針・予算編成方針にも、歴史的な町並みと調和した防災空間の形成に向け、ポケットパークの整備に着手することが記されている。

古い町並みは、そのまちの魅力でもある。建物の外観を残すことと、火災への弱さまで残すことを同じにせず、消火設備、建物の間の空間、電線類の地中化などを組み合わせて考える必要がある。

武蔵野市で考えておきたい権利関係と備え

今回、復興の条件として気になったのが権利関係だ。

事前質問への回答では、全焼した13棟のうち、賃貸物件は2棟だった。市は、賃貸と自己所有で復興に関する対応に特段の違いはないと説明した。

ただ、この回答を、そのままほかの商店街にも当てはめられるとは限らない。土地所有者、建物所有者、営業する人が異なり、さらに転貸が重なるような場所では、誰に何を確認し、誰の合意を得るかが複雑になる。

今回、共同での撤去や復興の協議を進められた背景には、自己所有の物件が多かったという条件もあるのではないか。これは先方の説明とは分けて考えるべき、私自身の受け止めだ。

武蔵野市でも、火災を起こさない対策と併せて、起きた後に生活と営業をどう支えるかを考えておきたい。相談窓口の体制、住居の確保、がれきの処理、仮店舗での再開支援、関係者との連絡や合意形成。臼杵市が実際に担った仕事は具体的だった。

電線を介した延焼の説明からも、無電柱化は景観整備だけでなく、防災の面から進める必要があると考える。

八町大路の復興は、まだ途中にある。すぐに必要な支援を進めながら、地域で暮らし、商いを続ける人たちが将来の使い方を話し合っている。その経過を、武蔵野市の商店街の備えを考える上での参考にしたい。

関連リンク
八町大路 | 臼杵市中央通り商店街
その他の視察報告

RELATED ARTICLES